「人生処方詩集」と題された詩集がいくつかある。古いところでは寺山修司にこの題の詩集があるし、まど・みちおにもある。しかし、最も広く知られているのは、ケストナーのそれだろう。
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「人生処方詩集」とは「生きていて何か問題にぶつかり、困ったときに読む詩」を集めたものと言っていいが、もともと単なる個人的感情や意見の公開は厳しく抑えてきた人だけに、「読む薬」という面が強い。「抒情的家庭薬局」だと、本人も書いている。
目次はなくて巻頭にインデックスが入っているが、「用法」と題されたこれがまた一般的な詩集とは大いに異なっている。例えば、
年齢が悲しくなったら
結婚が破綻したら
秋になったら
といったぐあいに、悩めることもしくはそれに類することから「薬となる詩」がたちどころに検索できるのだ。
最初から2つめにある詩「男声のためのホテルでの独唱」。
これはおれの部屋であり しかもおれの部屋でない
そこにはベッドが二つ 手をつないでいる
ベッドは二つでも 一つしか要らない
なぜって おれはまたひとりぼっちになったんだから」
ホテルのツインの一室での男の独白。男の年齢はわからない。だが、あまり若くはなさそうな気がする。そうして、連から連へと進むと、男は愛する女性を他の男に奪われたのだとわかる。だから、こう言う。
しかし女があやまちを犯すためには
はたから邪魔をしてはならないのだ」
最後に処方が来る。
世界はひろい 君はその中で迷子になる
ただ願わくは あまり迷子になり過ぎないように……
おれは しかし 今夜はよっぱらって
君が幸福になるように いささか祈ろう」


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