2026年5月31日日曜日

トゥパック・シャクールの詩集

 


 図書館の音楽書の棚を見ると、『ニール・ヤング詩集』や『ポール・マッカートニー詩集』といった詩集体裁の本がある。開いたことはないが、歌詞を訳して詩集に仕立てたものだろう。このタイプの本ではディランの全詩集が広く知られているが、歌はやはり歌として聴くものであって、詞だけを取り出した場合、何か欠落を感じることが多い。


 たまたま書名に惹かれて借りた『トゥパック・シャクール/コンクリートに咲いたバラ』も似たようなものなのかと思ったが、違った。ヒップホップの世界で名を挙げた彼は、著名になる以前、詩のサークルを主宰していた。これは、そこで発表された詩作品を集めた1冊だ。


 といって、ここに収められているのがいかにも文学的な純粋詩かというと、実はそうではない。読んでまず感じるのは、これはラップそのものではないかということだ。読んでいるのはもちろん翻訳文だが、独特のリズムがあり、ラップのパフォーマンスに立ち会っているような錯覚におそわれる。


  ひとめ見た時からもうわかっていた

  ふたりのハートはいつか結ばれる運命にあるんだってことを

  どんな状況だろうと関係ない オレのハートは

   嘘をつかないんだ

  君がそんなことを認めないっていうなら

  後で驚くのは君自身だよ


 「ひとめ見た時から」という標題の詩。ラップどころか、メロディーをつければ、昔風のポップ・ソングになりそうな詩だ。

 ただし、職人の手になるポップ・ソングとは違って、言葉の1つ1つに個人的感情がたたみこまれている。だから、読んで感じるものは多かった。


 トゥパック・シャクールの死は1996年9月7日。ラスヴェガスで横付けされた車からの発砲を受けて亡くなっている。25歳の悲劇的な死だった。


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