丸田秀三君の個人サイト「満月工房」に美しいあんずの花の写真が掲載されている(http://mangetsu.net/wp/?p=13885)。
見とれていて、この花が咲く時期に逝った友人知人が多いことに思いがいたった。この3月13日に逝った渡辺達生君がそうだし、もう12年も前になるが、門坂流もまたしかりだ。あんずは桜より少し早く咲く。わが友垣諸氏は桜を待たず、あんずの花に誘われるように天に駆けていった。
僕自身の好みで言えば、あんずの花は桜より好きである。低木ではないものの、多くは樹高がせいぜい3〜5m。圧迫感のない高さがいい。
残念ながらいま住んでいる花見川地区には桜の名所はあっても、あんずはほとんど見られない。家のすぐ近くに「杏」という山小屋風のつくりのスナックはあるが。
マイナーの花、ケイト・ウルフ
あんずの花の写真を見ていると、もう一つ、ケイト・ウルフを思い出す。かつて渋谷百軒店にあったロック喫茶ブラックホークで「マイナーの花」と呼ばれたあのケイト・ウルフを。こじつけめくが、彼女の歌は桜のように華やかではなく、それこそあんずのごとくひっそりと咲く感じがする。
何もせずにのんびりと時を過ごす――せっぱ詰まった状態で都会で暮らしているとかつても実際には暇になった今もそんな一時が恋しくなることがある。実質できるのは適当なディスクでも選んでぼんやり音楽を聴くのがせいぜいなのだが、そんなときにはケイト・ウルフのベスト盤『GOLD IN CALIFORNIA』(RHINO R2 71485)に手が伸びることが多い。
彼女の歌に興味をもったのは、マイナー・レーベルから出たデビュー・アルバム『Black Roads』(レーベルその他不明)に出会ったときである。化粧っ気のないジャケット写真の彼女を見て、きっと無用な飾りを捨てた歌をうたう人にちがいないと直感した。
直感はみごとに当たっていて、およそ巧みとはいえないが、しかし語るように静かに歌うその歌に心ほぐれるものを覚えた。
埃をかぶった本、色あせた紙の山を
いつもいつもひっかきまわしていたっけ
でも、そこから得られるのは
ずっとずっと昔の
語りつくされたお話だけ
それはもう昨日のこと、過ぎ去ったこと
ふと気づくとわたしはいま
大分水嶺を横切る川がその流れを変えるところ
山の斜面にいる
(Across The Great Divide)
なぜか『GOLD IN CALIFORNIA』からは洩れている「Green Eyes」がネットでは聴ける(https://youtu.be/PsXGzblg7Ws?si=iABs60x7-20VT2oK)。こちらも文句なしに素晴らしい。静かな歌いぶりのなかに人の心をぐっとつかむ雄弁さが潜んでいる。
彼女を「マイナーの花」と呼んだのは松平維秋だが、彼と一緒にレコード『Black Roads』を持参して、大昔、ラジオ深夜放送「馬場こずえの深夜営業」に出たことがある。DJのこずえさんがいたく気に入ってくれて、レコードはしばらくTBSに預けたままになった。放送局の重針圧プレーヤーでさんざんかけられた結果だろう、後日、レコードが傷だらけになって戻って来たのを思い出す。
1986年12月10日、僕より5つ年上のケイト・ウルフは、春を待つことなく、白血病のために44歳の若さで逝った。ハナとマックス、二人の子を残して。


なんとなんとまたもやブログをご紹介いただきましてありがとうございます。冷や汗。
返信削除YouTubeでケイト・ウルフを聞きました。沁みますね。こんな歌手がいたなんてまったく知りませんでした。YouTubeではほかにもいろいろ聞けますがやはりcdが欲しくなります。
ケイト・ウルフはもっと長く生きてほしかったですね。彼女の曲Across The Great Divideのナンシー・グリフィス&エミルー・ハリスによカバーも素晴らしいです。→https://www.youtube.com/watch?v=6uQNRTnsntY&list=RD6uQNRTnsntY&start_radio=1
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