古い歌が記憶の底から不意に浮かび上がってくることがある。
We had an apartment in the city
Me and Loretta liked living there
Well, it'd been years since the kids had grown
A life of their own left us alone
ジョン・プラインの「ハロー・イン・ゼア」。記憶から呼び覚まされた歌は、コーラス部分へと続く。
You know that old trees just grow stronger
And old rivers grow wilder every day
Old people just grow lonesome
Waiting for someone to say, "Hello in there, hello"
この曲を含むアルバム『ジョン・プライン』がリリースされたのは1971年。ただし、日本盤はそれより1年ほど後だったか。プライン第2作目の『原石のダイアモンド』(1972)が日本では先に出、それに続けてのリリースだったと思う。
いずれにしても、そのとき僕は20代半ば。老人の孤独を歌ったこの歌に敏感に反応しはしたが、それはどこかしら他人事だった。
時移って現2026年、僕はもうすぐ79歳を迎えようとしている。そして、「ねえ、古木はどんどん逞しくなる/古い川は日毎に川幅を増す/老人はただ寂しくなるだけだ/誰かが“やあこんにちは”と言ってくるのを待ちながら」というフレーズはまさしく自分自身のものとなった。こうして、古い歌は新しい歌になった。
「第二のボブ・ディラン」だって?
プラインは「第二のボブ・ディラン」という惹句をふされてデビューした人である。しかし、「ハロー・イン・ゼア」1曲を見ただけでもディランとは異なるキャラクターの歌い手であることは明瞭だ。どちらかといえば抽象度の高い詞を多く歌ってきたディランとはちがい、プラインは市民生活の具体性に密着する。そうして、聴き手の心にどう生きていくかという問いを投げかける。僕がプラインに強く惹かれたのもその点ゆえだった。
デビューから49年後の2020年4月、ジョン・プラインは新型コロナに感染して死んだ。74歳だった。


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